3Dプリンタ:Adventurer3でSainSmart PETGを使うときの設定
概要
試行錯誤中ながら、ある程度印刷がうまくいくようになったのでAdventurer3でサードパーティー製PETGを使う場合の印刷条件出し方法と、私が使っているSainSmart PETGでの印刷設定を参考までに記事にしました(要エキスパートモード)。
時間が無い人は前提条件と一番最後の設定内容だけ見ればよいかと。
より良い設定・改善点があればコメントを頂ければ幸いです。
前提条件
PETGは吸湿により糸引き等が目に見えて酷くなるため、フィラメントの乾燥がほぼ必須かと。私はeSUN eBOXという乾燥ボックスを使用していますが、自作でも何でもよいので導入を検討された方がよいと思います。
印刷設定条件出しの方法
PETG印刷に関する一般的な情報は以下の英語サイトが有用。大体はこの内容に従って条件出ししていけばよいと思います。
ざっくり要点を書くと、
<糸引き(stringing)対策>
非印刷時の樹脂垂れが起こす問題なので、それを軽減する以下条件を探しましょう。
(1) リトラクション(巻き戻し)量を増やす or リトラクション速度を下げる。
(体感的には量を増やすより速度を落とす方が効果大)
(2) ノズル温度を下げる。
(ノズル温度が低いと糸引きしづらいが、下げ過ぎると異音が出るでしょう)
(3) 樹脂を出していない時の速度を速める。
(樹脂が垂れて糸引きしても速く移動すれば千切れたり、糸が細くなります)
<(コンコンという)異音対策>
樹脂吐出速度が樹脂送り速度に負けているためコンコンと異音が鳴ります。異音源はボーデン
(4) ヒートベッドとノズル間の距離をPLAやABSの場合より離す。
(隙間が広いと吐出し易くなります。私のAdventurer3では隙間ゲージ0.1mmが通る位で調整すると良好に。)
(5) 印刷速度を速める。
(6) 樹脂の押出率を下げる。
<印刷中にノズル周りに樹脂が付いて印刷を汚す問題対策>
吐出される樹脂が多いから起きるようです。または印刷中のブツとノズル間をより空ける条件を出せれば解決するかもしれません。
(7) 押出率を下げる(1%刻みで。下げ過ぎるとこれまたコンコン異音が出る。)
SainSmart PETGの印刷設定例 for Adventurer3
設定時の環境は以下。
・ノズル径:0.4mm
・FlashPrint 4.6.2
公式プロファイル「Adventurer3 PETG」を初期設定として色々試行錯誤した結果、得られた設定は以下の通り。図示してない設定は公式設定のまま。
まずは糸引き対策用の樹脂垂れ防止設定。上手くいかない場合は巻き戻し長さを1mm単位で増加、またはスピードを5mm/s単位で減少。ちなみに当初スピードを速めていく方で試してみましたが、糸引きには殆ど効果なしのようでした。
次にいわゆるブリム設定。PETGでも薄っぺらい造形物や大物を印刷していると底面の隅っこが反りで剥がれてくる事がありますのでブリム(枠を付ける)はデフォで付けておいた方が無難です。
造形精度を高めるため本当は冷却ファンを常に回したいところ。しかしAdventurer3は冷却ファンの速度制御ができず、オンにすると冷却能力が最大で動くためにヒートベッド近くでファンが動いていると樹脂がベッドに定着しなかったり、ノズル周辺に樹脂の塊が出来て印刷中のレイヤを汚すなど非常に繊細です。そのため折衷策として下図のように設定しました。
どうも冷却開始直後は樹脂の出方が一時的に変わるようなので、それにより造形精度や糸引き等の問題が出やすくなりますので、ファン起動高さは造形内容に対して微調整が必要と思います。
PETGはある程度印刷された後、印刷物に定着しなかった樹脂が少しずつノズル周辺に溜まってくることがあります。それがどんどん塊となって何れは印刷物にくっつき最悪の場合、印刷中の脱調を引き起こすことになります。この問題対策のため押出率を少し調整しています。
更に調整したい場合は1%ずつ減らして様子を見ていくのがよいかと思います。いきなりガッツリ減らすとコンコン異音が出だして印刷不具合の元になるでしょう。
フィラメント個体差やAdventurer3の機体差の影響で、上述の設定そのままでは使えない可能性もありますが、印刷設定の叩き台として参考となれば幸いです。
最後に、印刷形状ごとに設定の微調整が必要のようです。ある形で適していた設定も別の形になると最適でなくなったりするので上述の設定を形状ごとに微調整された方がよいでしょう。
以上おわり